実はあいつは、普通に見て普通じゃなくカッコいいオトコだったりする。





オサナナジミ





「ぬぁ〜〜ぎすぁあああんvv」

今日も野球部でとんでもなく甘えた声が響く。
今年入ったお騒がせ部員、猿野天国だ。

「またやってますねー。猿野ってば。」
アタシと同じ女子マネの桃坂が、話しかけてきた。

「なんか野球部って主将とか犬飼キュンとかイケメンが揃ってるのに。
 あいつ一人で平均値落としてるって感じしませんか〜?」
あはは、と無邪気に残酷なことを言う。
まあ本当に悪気はないんだろう。
桃坂は典型的なミーハー女子高生なところがあるから。

アイツのいいところなんて早々見えないんだろうな。

確かに牛尾はいい奴だし、外見も綺麗だ。
犬飼もなかなか根性があるし、嫌いじゃない。

だけど、アタシには。


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「よ、お疲れ。天国。」

部室裏の段差で、一人腰掛けて休む天国に、タオルと声をかけた。


「鶫姉…。」

天国は、アタシを見ると柔らかく微笑んだ。
多分、他の部員やマネージャーは見たことはないだろう、笑顔。

こいつがいつも好きだって言ってる凪も見てないだろうね。

「今日も随分無茶してたな。
 中学ン時とえらい違いじゃない?」

「あはは…あの時は普通に色々と頑張ってただけなんだけど。」

そう。中学の時、天国は色々と頑張っていた。
勉強も、スポーツも。(弓道でかなりいい線行っていたんだっけ)
生徒会長までやったりして、本当に色々と頑張っていた。
今みたいにふざける事もなく、普通に。
つまり、それは天国のキリっとした真面目な表情や、真剣な瞳が惜しげもなくさらされていたわけで。

…要するに、カッコよかったのだ。


だから、モテていた。

今の犬飼ほど、というわけではないが。
人並み以上には告白されることも多かった。

…なんでアタシがそんなことまで知っているかと言うと。
アタシ、柿枝鶫と天国が世間で言う幼馴染だから。

今の高校ではその事実は知られていない。
ってか言ってないだけだけど。


「あのときみたいに普通に頑張れば?
 そしたら凪にも…。」
そう言いかけると。

今度は天国が口を開いた。
「…鶫姉は今みたいなオレ嫌か?」

「え?」

天国は背を向けたままで。
アタシからは表情が見えない。


「鶫姉が嫌なら…止めるけど。」

え?


「何で…?」

やだな、ドキドキするじゃないか。
天国、何期待させてんの?


「…オレは鶫姉が好きだから。」


………。


マジ?

天国の顔は見えない。
だけど、本気の声だ。

それはよく知ってる。


「鶫姉?」
天国が振り向いた。

ヤバイ。
すごくカッコいいよ。

アタシは、赤くなる顔を隠すみたいにして、天国の背中に抱きついた。


…こっちの方が恥ずかしいかな。


「ねえ…これが返事だと思っていいのかな。」

アタシは、天国の言葉に今度こそ本気で恥ずかしくなった。
だから、天国の背中に顔をうずめたままで。

頷いた。


「…サンキュ。」


天国は笑って。

自分の首に巻きついた私の手にキスした。



カッコいいな…もう。


その日、アタシたちは。


めでたくコイビトドウシになりました。


……中学の時と違って女じゃなくて男の目が痛かったけどね。

結局モテてたんだねえ、天国ってば。

あぶないあぶない。


                               end



お気楽ほのぼの小話でした。一応ハン猿にしたつもりですが。
ぼけ丸さま、何ヶ月もお待たせした挙句こんなので本当にすみません!
私は物凄く楽しんで書けましたが…。(笑)
柿枝嬢の喋り方はあんまり分かってないので必要以上に姐御っぽくなりました。
私にとって鶫さんはこんな感じの女性です。
女子マネでは凪ちゃんの次に好きですね。

ぼけ丸さま、素敵リクエスト本当に有難うございました!

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